投資における「複利」効果

資産形成のための投資手段として、不動産投資の他、様々な種類のものが世の中にはあります。

まず代表的なものとして、株や投資信託が挙げられます。最近はネット証券会社に簡単に口座を開設し、極めて低い手数料で、手軽に株式等の売買が出来るようになりました。現在国の税制優遇政策として施行されている、「つみたてNISA」や「個人型確定拠出年金(iDeCo)」の制度を活用し、これら金融資産の着実な積立を行うことは非常に有用です。その他、国債、外貨建て金融商品(外貨預金、外国株、外国債券、MMF等)、金投資、近年注目され始めている融資型クラウドファンディング(ソーシャルレンディング)、少々特殊なものとしては、FX(外国為替証拠金取引)、暗号資産取引等、数多くの手段があります。どの手段をどれくらいの比率で選択するか(どの程度のリスクを許容しながらどれほどのリターンを狙うか)は慎重に考慮する必要がありますが、それはさておき、本記事においては、投資一般から得られる利益として、どの程度の効果が期待できるのか、例示的にお示ししたいと思います。

資産を運用して1年間で得られる利益は「年利」と称されます。例えば、Aさんが某ネット銀行の定期預金に100万円を預け、1年後に2千円の利息を得たとすると、この年利は0.2%ということになります。

一般的に、個人投資家が目標とすべき年利は5~10%程度といわれており、仮にAさんが100万円を株式等に分散投資して年利5%を達成したとすれば、1年後には105万円が手元に残る計算となります。さてこの時点でのAさんの方針として、引き続き同様に100万円を投資運用するのか、それとも利益を含んだ105万円を投資運用するのか、何れが望ましいでしょうか。前者は「単利」、後者は「複利」と称されます。

前者の「単利」の場合、2年後には同様に5万円の利益を得て、手元には110万円の資金が残り、以後、単純計算で10年後には150万円、20年後には200万円、30年後には250万円の資金を手にしていることになります。

次に、後者の「複利」の場合、得られる利息が元本に含まれて再投資されるため、2年後に手元に残るのは110万2500円となります。あまり大きな差は感じられないかもしれませんが、これが10年後まで同様に繰り返されるとすると162万円、20年後には256万円、30年後には432万円もの資金が手元にある計算となります。

更に、Aさんが個人投資家として成功し、目標である年利10%を達成すると仮定すれば、1年後には100万円が110万円、2年後は単利で120万円、複利で121万円、10年後は単利で200万円、複利で259万円、20年後は単利で300万円、複利で672万円、30年後には単利で400万円に対し、複利では1745万円もの資金を手にすることとなります。

複利効果の偉大さがお分かり頂けたでしょうか。あの天才物理学者・アインシュタインも、この「複利」を「人類最大の発明」と評したとも言われていますが、利率が高くなればなるほど、また時間をかければかけるほど、複利の効果は正に右肩上がりに増大していくことを見てとることができると思います。

今回ご説明した複利効果は、元本金額に対し経過期間に応じた係数を乗じることで簡単に算出することができますが、この係数を専門用語では「終価係数」と称します。この「終価係数」一覧表はネット上で容易に入手することもできますし、またはこの係数を用いた複利効果を簡単に計算できるサイトも数多くあります。ご自身の資産運用上の目標金額を定め、これを達成するための投資戦略を練る上で是非活用してみて下さい。

繰り返しとなりますが、世の中に数多くある投資手段には、それぞれに異なる特性があり、運用にあたっては十分に注意しなければなりません。たとえば、株価には大きな値動きがあり、預貯金の様に元本が保証される訳ではない為、生半可な知識だけで日々高額な株式の取引をしていては、ほぼ確実に資金をすり減らしてしまうことになるでしょう。職務に専念すべき日中にも常に株価に気を取られてしまっては、これは将来を見据えた有形・無形資産の形成手段としては本末転倒な状態です。また、FX等は、成功すれば年利どころか月利数10%の利益を得られる可能性もある一方、規律あるトレードを行うための知識・手法、感情的にならない強いメンタル等がなければ、資金を一気に吹き飛ばすことにもなりかねません。一説では、この世界で1年間に生き残る個人トレーダーは1割程度、更にその先10年間生き残るのは、そのまた1割程度とも言われています。

様々な投資手段の内容については、また別の記事において、個別的テーマとして逐次解説していきたいと思います。